2014年10月23日木曜日

エボラの事

日本に帰ってきて病棟でまず冗談半分に言われたのは「エボラ大丈夫?」でした。

俺、西アフリカに行ってないし、アメリカでも少なくともまだ極小数の症例だけだし、、、なんて切り返しましたが、飛行機のような密室で自分の咳の隣にもし高熱を出しているような人がいて、その人がくしゃみや嘔吐を繰り返したり、極端な話「体から出血」を見せているのであればともかく、基本的には飛沫感染はあっても空気感染はないと言われているバイラスですから。

話はちょっと飛びますが、今、私が一番凄いなと思うのは国境なき医師団の人たちでしょうか。
現時点では制圧可能と言われる明確な治療法のない伝染病」が蔓延している、政治的に不安定かつ公衆衛生に関する無知と誤解が蔓延している地域に飛び込んでいく、という行為は生半可な覚悟ではできるものでは有りません。
医学的に正しい行為を本人たちが行っていても、スタッフの質が低かったり、この前起きたような狂信的集団による襲撃事件が有るのですから、リスクやストレスは並大抵のものではない事は確実。
私から見ると物凄い高い使命感を持っているほとんど宗教ミッションのレベルの行為にしか思えません。

感覚的には、ほとんど実弾飛び交う戦地の真ん中で薄い鉄の盾を持って弾を避けようかというようなレベルのリスクだと思います。申し訳ないけど、政治的にそんな状況のところには(私は未だ養わないといけない家族がいるので)ヘタレと言われようが今は行けない、、、。

富士フィルムが作ったアビガンや他の国のベンチャーが作った薬も、今のところ完全制圧が可能なドラッグということが確実に証明されているわけでも無さそうですし。

これらの薬の投与に関しても、実質的なぶっつけ本番の臨床試験が始まるわけです。これから症例が増えて、事前投与や投与時期、症状別、もしくはエボラのサブタイプの違いによって、効くレベルの差などというのが判明してくると思われます。
残念ながら、この疾患に罹りそれから生還してきた人達の抗血清の投与などに関してもまだまだ治験が揃っていないと思われるので「効果の高い治療法」という意味では未だ何も言えません。

何にしろ一本鎖のRNAバイラスですからポイントミューテンションなどによる変異の可能性は高いわけで、前にもこのブログに書いたことが有ると思うのですが、私がNIHに居た時に真後ろの席で、スペイン人の女の子がCDCから特別の許可をとって送られてきたエボラウイルスの部分シークエンスのDNAプラスミドを使って実験されていた時よりかは「未だ相対的に」安心してます。(なにせ感染の可能性はゼロですから!)

きっとエイズのように、人類の英知がエボラを制圧し、過去の疾病とする日は必ず来るのでしょうが、それが起きるのが世界的感染拡大前なのか西アフリカ中心のレベルでとどまるのか、、、。緊張しますよね。
アメリカでは例えスポットで感染者が発見されたとしても、感染が無制限に拡がるようなことは、実際の所、私は「無い」と思ってますけどね。

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